渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

太陽のない街

蟹工船の同窓会の通知が来たので、クロゼットから当時の作業着を引っ張り出して、久々に着てみる。90年ぶりにも関わらず、ぴったりフィット。動きやすさと磯臭さが、オホーツク海で過ごした往時をなつかしく思い出させる。みんな、どうしているのか。ほぼ定刻通りに、会場の一橋学士会館入り。よう、と明るい声で背後から肩を叩く者あり、振り返ると、今風のマーク・ボラン風グラムファッションに身を包んだ、鬼浅こと現場監督の浅川が颯爽と肩で風を切り、おれの横をすり抜けて、エントランスを突っ切って行く後ろ姿が見えた。変わんないな、あの人も。ざわめく会場内を行き来する、思い思いの仮装に身を包んだ参加者たちの見分けがつかず、ビールの紙コップを手にぼんやり佇んでいると、突如照明が落ちてエルガーの行進曲「威風堂々」が響き渡った。作者・小林多喜二先生の入場です!とのアナウンスに導かれ、銅鑼や鐘太鼓を打ち鳴らす魑魅魍魎の群れに担ぎ上げられた極彩色の神輿が、現れた。神輿の上に仁王立ちして、場内にキャンディーを振り撒いている、一見明治大正の文豪ふうの大男は、どう見ても横綱の変装だった。

サイケロイド

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