おいデカバナ、コーラ買ってこいよ。寝転んで、エロ本を読みふけりながら振り返りもせず、背後で正座していた安倍総理に命じた渡辺電機(株)さんに、思わず抗議しようと立ち上がった馳浩議員を制して、総理はゆっくりと立ち上がった。あとミカンな。言い放って渡辺電機(株)さんが投げ捨てたミカンの皮が、ぺたりと総理の頭に張り付く。ミカンの皮を乗せたまま公用車に乗り込んだ総理を見送ると、馳議員は暗い決意を秘めてネクタイを外しながら、渡辺電機(株)さんが寝転ぶ茶室へ戻って行った。おれが、あの無礼者を、殺す。ものも言わず襖を開けて仁王立ちする馳議員の裸体から、闘気が立ち上る。だが、その時すでに渡辺電機(株)さんは渡辺電機(株)さんであることをやめ、大きな白い繭になって眠っていたのである。じゃあ総理は、最初から全てを知って…。感極まって立ちすくむ馳議員の目から、熱い涙が溢れ出た。その嗚咽の声に気付いた車中の安倍総理は、頭のミカンの皮を手にとってムシャムシャ食いながら、立派な蛾になれよ電機さん…。そう呟いて、微笑むのだった。
23年前、リトアニアのシンセポップ。まだ佇まいにソ連の残り香が。
