じゃあ、本物のちゃんこってヤツを食わせてやるよ。今晩また来るぜ。そう言って渡辺電機(株)さんが出て行くと、一瞬の間をおいて、力士たちの爆笑が巻き起こった。始祖吉葉山以来代々伝わる、我が宮城野部屋の伝統のちゃんこに、ド素人が勝つだと？力士たちが笑い転げる中、横綱だけは煮えたつ鍋を睨みつけ、黙々とちゃんこを平らげていた。奴は、必ず何かやって来る。大丈夫ッスよォと不満げな付き人を張り手で失神させ、震え上がった残りの若い衆に命じて部屋のすべての窓とドアを釘で打ち付けさせた横綱は、装着した西洋甲冑の強度を確かめるかのように、コンコンと面を小突いた。おい、水道の元栓は締めたか？そんなことまで…。言いかけて言葉を飲み込んだ若い衆が慌てて洗面所に走り、やがて悲鳴。あのや朗、水道から…。ガチャリと甲冑を鳴らして立ち上がった横綱の目前で、水の塊が宙に浮き、やがて人の形を取り始めていた。
当時は、商業主義に反発して脱退しアートに徹したPガブリエルと、売れ線をひた走ったジェネシス残留組という捉えられ方だったが、売り方が違うだけで同じだ同じ。
