短躯にゴマシオの短髪、低い鼻に大きなふたつの穴、少々出っ歯の大きな口。典型的な下町のおっちゃんといった庶民的な風貌で親しまれた渡辺電機(株)さんだったが、ある時、同じ町内の小学校の頃から顔なじみの床屋に顔を出し、渡されたおしぼりでグリグリと巨大な鼻の穴を掃除しながら、言った。ゴスロリにしてくれ。へぇ、どういう風の吹き回しよ。手に馴染んだハサミを鳴らしながら、店主が笑う。今流行ってんだろ？ガーズルバーの娘っ子に、似合うんじゃねえかって言われてよ。ヘヘッ、おれもまだまだ捨てたもンじゃねえってか？まともにガールズバーと発音もできない渡辺電機(株)さんをそそのかして、笑い物にしようというのか。店主が眉をひそめ、痛ましげに見た鏡の中の渡辺電機(株)さんは、期待に頬を紅潮させ、鼻息に長い鼻毛を揺らせている。そうか、まあやって見るかな…。こうして生まれたのが、のちのBuck-Tickである。
再結成ピストルズの激変っぷりはよくネタにされますが、ザ・ダムドはまだ若い頃からこんなんなって、そろそろ社会人になっていた元パンクスたちを困惑させていました。
