ガラスの脳

連載は全て打ち切られ、電子書籍の各社にも回状が送られてデジタルコミックの収入も閉ざされ無収入となり、部屋の力士たちを養う金が必要な渡辺電機(株)さんがとった最後の手段は、漫画の神様・手塚治虫を盗作で訴えるという暴挙だった。あの医者のマンガも、ロボットのマンガも、燃えるトリのマンガも、わしが描いたスケッチをあのメガネ野郎が盗み見したんですわ！ヤケ気味に証言する渡辺電機(株)さんに対し、被告席に座った手塚はひとこと「彼の言うとおりですわ、判事さん。あんじょうしたってください」そう言って、包み込むような温かい笑顔を渡辺電機(株)さんに向けて言った。ボクはもう十分描いた。後のことは、頼んだで。これからの漫画界は、キミの時代や。手塚先生！涙ながらに叫ぶ渡辺電機(株)さんに背を向け断頭台へ消えた、漫画の神様。茫然自失で渡辺電機(株)さんが部屋に戻ると、力士たちはおらず、代わりに稽古場には悪鬼の形相の編集者たち、各社よりすぐりの強面の手塚番が、渡辺電機(株)さんを待っていた。悲鳴を上げる間もなく引きずり込まれ、以後彼らに監視されながら数十年、狭い部屋から外に出ることも許されず渡辺電機(株)さんは、手塚名義のマンガを描き続けたという。いつ頃どのように死んだのかも、よく判っていない。

Say You Love Me Too (feat. Clara Viñals)