渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

芸能20世紀 話芸の達人

上岡龍太郎を怒らせて漫画界を追放された渡辺電機(株)さんだが、あれから20年を過ぎた今でも、当時の話になると途端に口が重くなるという。それほどにまで深い心の傷をどのようにして負わされたのか、本誌は説得に説得を重ね、ようやく話を聞くことに成功した。電機先生、今日はわざわざお越しいただきまして。キミ、自分から呼んでおいてその言い方はおかしいやろ。わざわざて思うんなら、なんで自分の方から行かんのや。説明しなさい。そう言ってメガネを光らすロマンスグレーの短髪の紳士は、どう見ても上岡龍太郎の安直なコピーだった。電機さん、それほどまでに。インタビュアーに変装した横綱は、いたましげに首を振る。だいたいこんな失礼な質問をしたところで、それがキミにとって何の利益になるんや。そもそもキミがこの仕事を選んだのは…。延々と続く説教を上の空で聞きながら、横綱は悲しい気持ちになった。立ち上がって非礼をわび、背中を向ける横綱に気付かないのか、なおも渡辺電機(株)さんは喋り続け、その口の端からは透明な唾液が泡立って滴り落ちる。電機さんの分も、春場所は頑張らなければ…。だが、足首の怪我のせいで、もう横綱には場所を満足に勤め上げるだけの力が残っていなかった。

人間解体(ザ・マン・マシーン)

人間解体(ザ・マン・マシーン)