その時歴史が動いた

昭和の仮面ライダーは採石場でばかり戦っていたが、今の仮面ライダーはだいたいオフィス街で戦っているので、コレでは悪党を倒してもそのあとの各企業への弁償額はかなりのものになるのでは、などと余計な心配をしていた渡辺電機(株)さんに、来年度の仮面ライダー劇場版のラスボス役のオファーが来たので、大喜びで衣装合わせのために大泉学園の東映を訪れると、通された小部屋には菅原文太、梅宮辰夫、松方弘樹、安藤昇ら東映ヤクザ映画の重鎮が勢揃いして、渡辺電機(株)さんを待っていた。コレの落とし前、どうつけるつもりじゃ。菅原がテーブルの上に放り投げたのは、30年前に石森プロで渡辺電機(株)さんが手伝った、連載漫画「仮面ライダーBlack」の生原稿だった。主人公・南光太郎の黒いＴシャツに塗られたスミベタ部分のインクが経年で退色し、渡辺電機(株)さんが悪戯で描き込んだ文字「オナニー」が、くっきりと浮かび上がっている。他にもやったのか。安藤の問いに、震える声でハイと答えた渡辺電機(株)さんは、若い衆にどこかへ連れて行かれ、二度とその名を見ることもなかった。

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