ふふふ…新聞記者さんたち。不敵に笑い、渡辺電機(株)さんはバットを持つと、打席へ向かって歩き出した。そこまで言うのなら、お見せしましょう。大リーグボールを打ち破る必殺の打法を。マウンド上に設置されたピッチングマシンが、鈍く冷たい光を放つ。ヨシッ来い！渡辺電機(株)さんの掛け声でピッチングマシンから放たれたボールは特殊なプログラミングにより、まさしく星飛雄馬の大リーグボールそのものの完璧なスピードと回転をもって、バットを構える渡辺電機(株)さんに襲いかかった。ボールは微動だにしない渡辺電機(株)さんのこめかみに音もなく命中し、ポトリと落ちる。息を呑む報道陣。渡辺電機(株)さんは不敵な笑みを浮かべたまま、ゆっくりと前のめりに倒れ、そのまま絶命した。あれから45年。かつてグラウンドだった場所には高層マンションが林立し、あの場所にいた報道陣も、ある者は老齢を迎えて引退し、ある者はこの世を去り、もうあのグラウンドでの出来事を思い返す者もいなかった。じゃじゃん！脳天気な叫びとともにマンションのエントランスのガラスを粉々に粉砕して飛び出してきた渡辺電機(株)さんの、どっきりでしたー！という声に笑う者はなく、ガラス代の弁済と家宅不法侵入の罰金を支払うため、プラスチック再生工場での果てしない低賃金重労働の日々が、渡辺電機(株)さんを待っていた。
トーマス・ドルビーが関わっていたのか。知らんかった
