「電機(株)の父」と称して、おれとまったく同じ顔をして頭の両脇にでかいツノが生えている男が空からやってきて、電機の国に帰ろうとかほざくので、また政府のスパイの仕業だろうとアルミホイルで頭を包み、ホーミィで敵の電波を遮断することを試みたが、ツノの男はかまわずおれを抱きかかえて空高く飛び上がり、もうお前は地球のために十分に戦ったのだ、しばらく身体を休めるが良いと言って、おれを遠くの星へ連れて行こうとしたが、成層圏を超える頃にはおれは酸素がないのと寒いのと風圧と急上昇によるGとで、とっくに死んでいた。人間の肉体など、実にもろいものである。電機(株)の父は舌打ちして死体を放り捨てて星へ帰ったが、故郷では息子を異国で殺した重罪人として裁判にかけられ、処刑されたという。
