スカイハイ

誰にも顧みられることもない惨めな一生、せめて死ぬ時くらいはド派手に耳目を集めてやろうと、スカイツリーの最上階からのダイブを計画した渡辺電機(株)さんだが、ほんじゃ死にまーすと宣言して非常階段を駆け上がっても、誰一人気づく者もなく、何度か息を切らしてしゃがみ込み、一度はげろまで吐いて、数時間の時をかけ、とうとう最上階よりさらに上の、鉄塔の一番先っちょのてっぺんにまでたどり着いてしまった。なんか、簡単すぎねえか。意外とこの世は、出来ないと思いこんでるだけで、だいたいのことは簡単にできるのではないか。はは、飛べたりしてな。飛べたら飛びます、飛べなかったら死にまーすと、誰に聞かせるともなく呟いて、羽ばたくポーズでふわりと空中に乗り出したら、はは、ほーらやっぱり飛べた。なんか夢っぽいんすけど、ここでションベンしてみて、感触によっちゃ夢確定だな。で、してみたら案の定、安堵を伴う快感の中、じんわりと腰回りに湿ったぬくもりが広がっていく。ああ、夢でした。おねしょ確定か…と、渡辺電機(株)さんが渋々目を開けると、巨大な蜘蛛の巣に絡め取られグルグル巻きにされている自分が、そこにいた。隣でキョトンと目を見開いたままのやくみつる氏の顔が、カラカラに血を吸われぺしゃんこになった身体から離れてぶら下がるその先に、貪欲な目を光らせてにじり寄ってくる巨大な女郎蜘蛛の姿が見えた。

このコンピがコクシネル初体験でしたが、昔ジャニスで借りました。CDになってたのか…。

くっついて安心