父の再婚

80を超える父から、再婚相手の女性に会ってほしいと連絡があり、渋々出かけてアッと驚いたのは、なんとその相手はおれが今年の夏まで付き合っていた女性だったのである。おい、どういうことなんだ。呆然として尋ねると、女は悪戯っぽい笑顔で舌を出し、ごめんね、この人に近づくために貴男を利用したの。などと、信じられないような事を言う。そしてさらに、すでに腹には子供が宿っているという。おい、どっちの子供だよ。さあ、知らないわ。どっちにしろ同じ血を引いてるし、いいじゃない。ということは、同時進行か。なんてこった、ずっと父親と二股かけられてたのかよ。と、頭を抱えてからふと、でもどうせ白鵬だろ？念のため小さな声で呟いてみた。すると、おいまだ早ええだろ！と吐き捨てて横綱は憤然と立ち上がり、おれの父親を投げ捨てると、今や誰が見ても女装した大男にしか見えない背中を揺すって、店を出て行った。すでに喫茶店の形を留めない、すすきの生い茂る原野にポツンと取り残されたおれは、さっきまで父親に見えていたむじなの死体を抱いたまま、呆然と立ちすくんでいた。

Solid Gold & Another Day Another Dollar