渡辺電機(株)

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狐狸庵冥界話

遠藤周作が軽井沢の別荘に滞在していた折、朝の散歩を楽しんでいると、朝もやの向こうからやって来たのは、馬にまたがった親友の北杜夫であった。近隣に別荘を構えていると聞いてはいたので、近々訪ねるつもりではいたが、まさかの邂逅であった。「北クーン」声をかけると、馬上の北は振り向き、「やあ!」さっそうと声を返し「止まれっ!」と、凛とした声で馬に命じた。だが、馬は北の指示などおかまいなしに、のんびりした歩調を止める気配がない。「トマレッ、トマレッ」焦りの色濃く繰り返す北だが、馬はそのままの歩調で、ゆっくりと遠ざかって行く。「北クーン」「トマレッ、トマレッ」「北クーン」「トマレッ、トマレッ」北杜夫を乗せた馬の姿は、やがて朝もやの中に消えてしまった、一瞬後。馬の苦しげな悲鳴と、生き物の身体がすり潰され、血漿を滴らせて飲み込まれる音。「やあ遠藤さん、かっこ悪い所を見せてしまいましたね」血だらけの口の周りを拭いながら、地響きを立てて戻ってきた北杜夫は、身の丈3mを超え、耳まで裂けた口から長い舌をくねらせた、緑色のカエル獣人だった。あかん、喰われる。死を覚悟し、失禁しながらその場にへたり込んだ遠藤を、笑顔の北は粘液の糸を引く指先で指し示した。「遠藤さんだって、もう死んでるでしょう」あ、そうだっけ。遠藤は呆気にとられて己の手の黒い羽毛を見下ろし、長く黄色いくちばしをパクパクさせる。じゃあおれも、もう北クンの仲間だったんだな。言い終わる前に、北の長い舌が遠藤の身体に絡みつき、数枚の黒い羽毛を残して、遠藤は北の胃袋の中に消えてしまった。「北クーン」微かに胃の中から聞こえる遠藤の声をなつかしく聞きながら、北杜夫は雲場池の水面にトプンと飛び込み、二度とこの世に浮かんで来なかった。

初期のギターがガチャガチャかっこいい曲。ヘンに環境音楽やニューウェーブに色気を出さずこういう曲ばっかりやってたら、ギターヒーローになっていたのではないか。

Futurama

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