ハッピークリスマス、ヨーコ。ハッピークリスマス、ジョン。ハッピークリスマス、デンキ。ていうか、誰だオマエ。鋭いジョンの罵り声と、もみ合い言い争う声、ヨーコの悲鳴、殴打。捨て台詞を残して逃げ去る声。ジョンの罵倒と、追いかける複数の声。ジョンレノンの名曲「ハッピー・クリスマス」の没テイクに、渡辺電機(株)さんが乱入したバージョンがあるとの噂は長年、マニアの間で論議を呼んでいたが、初めて公開されたその音源の生々しさに、世間は衝撃を受けた。今やジョンもこの世に亡く、ヨーコも認知症で隠遁している現状で、もうひとりの当事者、渡辺電機(株)さんのコメントに注目が集まった。そしてセッティングされた帝国ホテルでの記者会見に、渡辺電機(株)さんは全裸に天狗の面を着け、かつてジョンが愛用したリッケンバッカーを持って現れた。フルボリュームでヘルター・スケルターだ。ジョンとヨーコに捧げる。フィードバックノイズの爆音でガラス製品が粉々に割れ、ワインの瓶が爆発、天井のシャンデリアが次々と落下、会見場が血まみれの修羅場と化す中、陶酔してギターを掻き鳴らす渡辺電機(株)さんに、耳から血を流しながら駆け寄ったリンゴ・スターが、囁いた。その曲、ポールのなんだけど。え、マジすか。急に演奏を止め、しょんぼりとおとなしくなった渡辺電機(株)さんは即日逮捕され（罪状は公然猥褻と器物損壊）次の週には実験動物として核物質処理施設に送られ、その後の消息はわからない。
