３年Ｖ組白鵬先生

せんせーい、渡辺くんが吐きました。悲鳴に近い女子の声に、教室にどよめきが起きる。ゲロやゲロ！きったねー！子どもたちの声が飛び交う中、渡辺電機(株)さんは目に涙をためて、朝食に食べたパン、ハム、オレンジ、オムレツ、ドライマンゴー、トムヤムクン、ガパオライス、担々麺、鱒寿司、石狩鍋、スープカレー、ビーフストロガノフ、磯月見うどん、バジルチキン、萩の月、知的なタコイカ、でん六豆などを、食べる前と全く変わらない出来たてアツアツの状態のまま、ポコポコと吐き出し続けた。美味しそうな香りが教室内に漂い、最初は遠巻きにしていた子どもたちも、歓声を上げて群がり、先を争って食べ始めた。おい、いいかげんにしろ。担任の白鵬先生の一喝であたりの空気は一変、そこは教室ではなく、汗と怒号飛び交う宮城野部屋の稽古場だった。二日酔いのまま稽古に現れた渡辺電機(株)さんは、制裁のぶつかり稽古にすぐ息があがり、土俵上で身体をくの字に曲げ、苦しそうに嘔吐し続けていた。立てオラッ！頭上から横綱の怒号が容赦なく浴びせられる。楽しかったあの頃には、もう戻れないのだ…。

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