おれが半年前から練習に練習を重ねてきた渾身の「いとしのロビン・フッドさま」をワンコーラス歌い終わらない内に、玉座に座った榊原郁恵は虫を払いのけるように手を振り、「もうよい、殺せ」と吐き捨てた。年々厳しさを増しているとは聞いていたホリプロスカウトキャラバンだが、まさかここまでとは。ホリプロの二流タレントたちに押さえつけられ、還暦どころか九十歳を超えていても不思議のない、深い皺が刻まれた榊原郁恵の顔を見上げるおれの視界が、喉元から噴き出す血で紅く染まった。
キュラソ星人が居間に入ってくる場面と同じくらい恐くてかっこいいです。