渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

高原にいらっしゃい

名古屋場所がハケたらボクの別荘に遊びにおいでヨ、という渡辺電機(株)さんの軽口を真に受けて、名古屋からそのまま高山本線で北上、高山から貸切バスを3台チャーターして上高地までやって来た横綱率いる力士一行は、田代池のほとりの茂みにあばら家を建て、自給自足の世捨て人暮らしをする渡辺電機(株)さんの、野生動物半歩手前の姿に、言葉を失った。おいお前ら、別荘ってこれのことかな。横綱、ダメっすよ。完全に目がイってます。そいつもう人間じゃねえっす。付き人が言うまでもなく、ドジョウを口にくわえ、警戒して威嚇の唸り声をあげながらじりじり小屋の方へ後ずさる渡辺電機(株)さんを、横綱は絶望的な気分で、眺めていた。帰りましょう、横綱。袖を引く付き人に、横綱はきっぱりと言い放った。俺達は相撲とりだ。やるべきことをやる、それだけだ。その言葉で吹っ切れた一同に、迷いはなかった。怪力の大男たちの手にかかり、たちまち周囲の木は切り倒され、池は埋め立てられ、そこには瞬く間に土が盛られ、立派な土俵が作り上げられた。大きな柏手の音とともに始まった横綱土俵入りをじっと見つめる渡辺電機(株)さんの眼に、次第に叡智の光が宿るのを、横綱は頼もしい気持ちで見守りながら、力士たちの掛け声に合わせ、力強い四股を踏むのだった。

Chango

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