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渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

虚構の大地

体格に恵まれず稽古も熱心とは言えず、番付も序二段と三段目を行ったり来たりのままで三十路も半ばを超えた渡辺電機(株)さんだが、それでも親方から廃業を言い渡されることもなく部屋にい続けられたのは、ひとえにちゃんこの腕前と、何と言っても誰もが抱腹絶倒必至の初っ切りのセンスゆえであった。地方巡業の煮え切らない土俵に不満を溜め込んだ客も、渡辺電機(株)さんのキレの良い動きとツボを心得たユーモアに、いつも大爆笑、満足の内に家路についた。だが、この日の土俵を取り巻く客は、全員が黄緑色のスキンヘッドに、体にぴったりと貼り付いた銀色のツナギ、その瞳は紫の光を放ち、土俵上の勝負にも無反応で、どこの国とも分からない不思議な言語で会話を交わしていた。いつも通り、結びの一番の後を締めくくる初っ切りをつつがなく進行させ最後の場面、相方に耳打ちする。おい、スペシャル行くぞ。いいんすか、こいつらヤバイっすよ。大丈夫だ、まかせろ。ハデに投げ飛ばされ、土俵上に大の字に寝転んでおどけた表情を作る渡辺電機(株)さんに、相方の力士が箒を投げてよこす。ぴょんと起き上がった渡辺電機(株)さんは箒にまたがると、腰をくねらせシナを作りながら、下品な猥歌を歌い始める。♪いやだよいやだよおよしなさい、ゆんべしてけさして、またしようとは…。静まり返った土俵上に響く渡辺電機(株)さんの歌声に呼応するかのように、黄緑色だった観客たちの顔面が次第に膨れ上がり、オレンジ色に赤熱して行く。固唾を呑んで見守る、力士たち。いよいよ熱を帯びる、渡辺電機(株)さんの歌声。破裂寸前にまで熟す、観客たち。エントロピーの臨界点に達した時に何が起きるのか、それは誰にもわからなかった。

イイ曲なのに、地味なおじさんの巨大な鼻の穴で締めくくる、あまりにも売る気のないPV

From A To B / Anywhere

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