空の塔
シンナーに気をつけて壁塗んなー。と繰り返していた親方が、だんだん口調がゆっくりになってきたと思ったら、その手からポロリと刷毛を落とし、へらへら笑いながら足場から滑り落ち、真っ逆さまに空中に消えていった。何千メートル下かもよくわからない地面に落ちて、欠片も残さず飛び散るだろう。これで、おれ以外の職人は全員落ちてしまった。赤のペンキはまだいくらでもある。いつ来るかもわからない迎えを待ちながら、おれはひたすら上へ上へと、この鉄塔を赤く塗り続けている。
後期CANの残り香を濃厚に漂わせていた、ファントムバンド。21世紀になってからグラスゴー出身のザ・ファントムバンドという別のが出てきたので、ややこしいです。