渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

ひとりぼっちのあいつ

2枚組のアルバム「The Beatles」、通称ホワイトアルバムを製作中、リンゴが一時本気で脱退を決意してスタジオを離れたエピソードは有名だが、その際にバンドとの連絡を一切断って身を寄せていたのが、当時おれが江ノ島に持っていたコテージだったことは、殆ど知られていない。世界に顔を知られたスターである上に、現代と違って白人が日本の町中を歩いていることなど無い時代。どこに行っても注目を浴びてしまうことは確実だったので、おれがリングアナを務めていた日本プロレスの悪役レスラーが使っていたマスクを着けさせ、「来日中の謎の覆面レスラー」というテイで押し通した。そうして彼はおれのコテージで暮らしながら、ビートルズで稼いだ膨大な外貨に物を言わせ、豪遊の日々を送った。それから長い年月が流れた。ビートルズはその後もおなじみ4人のラインナップで数枚の作品を残し、解散。リンゴはソロ歌手として、スポットライトを浴び続けた。では、おれのコテージで寝起きしているあの覆面の外人は、いったい誰なのか。いつしか訪れることもなく放置したままになっていたコテージを、40数年ぶりに訪ねてみると、廃屋同然に荒れ果て草木に埋もれかかったコテージの中から、聞き間違えようもないあの声で、のんきな鼻唄のイエローサブマリンが、かすかに聞こえてくるのだった。

超豪華セッションだけど徹夜飲みの明け方みたいな微妙なテンション

グレイト・ヒッツ

グレイト・ヒッツ