渡辺電機(株)

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殺しのグランプリ

有馬記念の枠順抽選会。おれはキタサンブラックの隣、2番枠からの出走。馬だけでなくチャリに乗った人間の出走が認められたのは意外にも古く、1998年のスペシャルウィーク全盛の時代だが、実現したのはおれが最初。そんなルールがあることすら知らない関係者が多いのも当然で、多くの有名騎手は挨拶しても目も合わせてくれない中、さすが騎手会長の武豊ジョッキーだけは、笑顔で「自転車との対決、楽しみですよ。隣の枠同士、お互い頑張りましょう!」と握手して、記念撮影にも応じてくれた。このおれが、自分自身を殺すために雇われた刺客だとも知らずに…。そして迎えたレース本番。おれに尻をコンパスの針で刺されたくらいでは王者キタサンブラックはいささかも動揺を見せず、後ろ脚でおれを自転車ごと数十メートルも蹴り飛ばし、そのまま他馬をちぎってゴールを駆け抜けた。晴れやかな表彰式の中、おれの死体はひしゃげた自転車とともに、いつまでもターフの片隅に放っておかれた。

こういうのが作られた時代や場所や空気が、もう年寄りの記憶の中にしかないというのは、なかなかに切ないものでありますが、それでもうんこは変わらず毎日出るのです。

Magic Time- Millennium Ballroo

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