智恵子が東京には空がないと言うので、せやせや、やっぱり大阪が一番やで。そう言って食いかけの串かつをちゃぽんとソースに漬けたら、智恵子は二度漬けを見逃さなかった。智恵子はモノスゴい速さでその串かつを奪い取り、おれの右手の人差し指の爪の間に、串の先端をめりめりと突き刺した。絶叫。剥がされた爪が、ソース壺の中へはぱらりと落ちる。泣き叫ぶおれの右手を軽々と押さえつけたまま、智恵子のもう片方の手が、ポン酢の瓶に伸びるのが、視界の隅に映った。繰り返す失神の合間に、ごめんなさいを200回は言ったろうか、智恵子の苛烈な体罰は閉店時間まで続いた。