大阪に行くと必ず寄っていた京橋駅前のうどん屋「京橋浪花」が店を閉めてしまったので、おれの記憶の中の浪花を訪ねて、おやじにワケを聞いてみた。おれの記憶がうろ覚えなためか、おやじの顔も声も曖昧で聞き取りづらく、くぐもった声で「景気が」「再開発が」「ウオノメ」「想像妊娠」「おおきに」「Жの亢∟」と、断片的に聞き取れる単語を拾っても、結局よくわからないままだった。記憶の中の京橋は巨大なソテツやメンガリス、ヒトサライの巨木が林立しており、極彩色のネオンが濃霧ににじんで、そこにいるだけでおれの頭もぼうっと曖昧に霞んでいくようだった。早々に退散したが、帰ってきた東京も蒸し暑く、濃霧の中に見たこともない巨木が林立して奇怪な花々を咲かせており、もう誰の記憶の中にいるのかも、よくわからなかった。
- アーティスト: COH + Cosey Fanni Tutti
- 出版社/メーカー: Raster-Noton
- 発売日: 2008/03/23
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