渡辺電機(株)

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殺人楽屋噺

おれの談志襲名の正式決定が近づくに連れ、周囲に不穏な影も漂い始めた。この名跡により発生する巨額の利権を思えば、それも仕方のない事である。おれのガードを買って出てくれた横綱白鵬も凶弾に倒れ、すでにこの世にない。おれ自身も何度も襲われたり、乗った船が座礁したり、新幹線のブレーキが効かなくなる等の目に遭ったが、NINJAとKARATEで鍛えた戦闘力で、どうにかしのいで来た。襲名発表の日までは、気が抜けない。唯一の安らぎといえば、密かに小向美奈子のDVDを鑑賞する時くらいだ。あのダラシないボディと弛緩した笑顔を見ていると、本当に安心する。画面の中の美奈子嬢が、慈愛の笑顔でおれに手を伸ばす。満面の笑みで伸ばした肉付きの良い両手がおれの喉に食い込み、渾身の力で締めあげてくる。美奈子嬢はいやらしく舌なめずりし「さあガッテンいただけましたでしょうか!」その童顔からは信じがたい、ガラガラに割れた低い声で、絶叫した。

お嬢だん (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

お嬢だん (1) (双葉文庫―名作シリーズ)