マンガのネタを探すためにクソゲーをやるのもシンドイが、これも仕事だから仕方がない。新宿に出て、駅前のさくらやで混雑をかき分けながら、ワゴンセールのファミコンを漁る。いつ来ても、「亀の恩返し」だの「銀河の３人」だの「いっき」だの「サラダの国のトマト姫」は豊富にあるな。どれもとっくにやり込んで、クリアしてしまった。「大将、なんかイキのいいクソゲーない？」「イキのいいのはクソゲーって言わねえよお客さん！」これは一本取られた。あれ？ここカメラのさくらやだよな。いや、さくらやって倒産しなかったか？ファミコン？あれ？見回すと、客で混雑していると思った店内には誰もおらず、おれが大将と思って話しかけていたのは、壁に貼られた、破れて色あせたゲームのポスターだった。消えかかった文字が、かすかに「…の朝までファミコン」と、判読できた。埃の積もった通路を抜けて外に出ると、満月だった。ネオンも消えて無人の新宿駅前に、無数のひとだまが飛び交っていた。
