中国のイビツな都市化など笑えません、日本でも昭和の頃には山を切り拓いた幹線道路では、失われた緑をカバーするため、山肌を覆う原色ミドリ色のコンクリート壁が、当たり前のように見られたものです。そう言って、静かに聴衆を見渡した渡辺電機(株)さんの顔面は、緑色に塗られていた。「近所にキチガイのおばさんが住んでいましてね」彼にしか見えない虫がたかってくるのを左手でせわしく払いのけながら、続けた。いつも夕暮れ時に自転車でその辺を流しながら「◎◎サン、退職シテクダサイ、退職シテクダサイ」と連呼するのですが、その顔面には不思議な模様のペイントがされており、これがなんと、数年後に人気を博した筋肉少女帯の歌手のメイクと全く同じだったのです。いや、そうでしょ。なんで嘘だってわかるの。目に見えない誰かに抗弁する渡辺電機(株)さんは、駆け寄ってきた数人のスタッフに羽交い締めにされ、人殺し人殺しと喚きながら舞台袖に連れて行かれ、二度と戻ってこなかった。
