ぶっ殺してやるぁー！！腹にダイナマイトを巻き、両手にバナナを握りしめた渡辺電機(株)さんがリイド社の２階ロビーに現れたのは、ある冬の寒い日のことでした。あ、どうしたんすか。ちょうどトイレで用を足して出てきた編集長が、さほど驚く素振りも見せず、声をかけた。いや。その。ネームを。ほう、できましたか。じゃ、見せていただきましょうか。きき今日はおれ本気っすボツなら死ぬ覚悟で来てますんでマジ、あ、え、はいこれっす。はい。神妙な顔をして立ったままの渡辺電機(株)さんを軽く一瞥して鼻を鳴らし、編集長はネームを読み始めた。紙をめくる手がどんどん早くなっていくのを、渡辺電機(株)さんは泣いているのか笑っているのか曖昧な、くしゃくしゃの表情を浮かべて、じっと見つめていた。
