なにわの英雄夢語り

西友の惣菜売り場で、揚げたてのアジフライやメンチカツが飛ぶように売れていくのを、ぽかんと口を開けて何時間も眺めていたら、見かねた初老の店員が、売れ残った冷えた白身魚フライ２切れをパックに詰めておれに手渡し「迷惑なんだよ。帰んな」と、吐き捨てた。ありもしない金を探してポケットをあたふた探るおれに舌打ちして「金はいいよ。ただし…」好色そうな笑みを浮かべると、おれの肩を摑んで耳打ちした。「あとは事務室で、な…へへへ」どうせ白鵬でも待っているのだろうと高をくくり、白身魚フライを手づかみで食いながら店員の後について行くと、パイプ椅子に座っていた西川きよし師匠が、おれを見るなり弾かれたように立ち上がった。師匠は大きな目に涙をいっぱいため、おれの油まみれの両手をガッチリ摑むと「やすし君、やっぱり生きてたんやな！」と、感極まった涙声で言った。慌てて店員を振り返ると、おれに目配せして首を横に振り、足早に売り場へ去って行った。それがキー坊との、そして漫才との出会いや。人生なにが起こるかわからんもんやでほんま、かなわんでしかし。

RIP David. I love you.

— adrian belew (@THEadrianbelew) 2016, 1月 11

キング・クリムゾン/ヘヴィー・コンストラクション