かつて初代若乃花や輪島、魁傑など強豪を輩出した名門花籠部屋だが、今では後を継ぐ者もなく、看板と稽古土俵だけがひっそりと残されていたので、半ば冗談で「安かったら買ってもいいかなあ」と理事長に打診してみたら、待ってましたみたいなテンションで、しかも結構な値段で押し付けられた。こうして力士経験の無い親方となったおれの下には、釘師、マサイ族、ホスト、忍者、ラッパーなど相撲界のはみ出し者の荒くれが、集まって来た。不敵な佇まいで異彩を放ち、相撲界に旋風を巻き起こすかと思われたが、彼らの全員が新弟子検査に落ちた。夢は消え、おれには巨額の借金が残った。
