私が元漫画家という噂を聞きつけて、時おり近隣の漫画家志望の若者が弟子入り志願に訪れる。先日もそんな青年の訪問を受け、もう自分には現役で描ける力が残っていないことを説明し、引き取ってもらおうとしたのだが、青年が地元・鵡川から持参した穫れたてのししゃもに目を奪われ、言葉を飲み込んでしまった。とりあえずその日は彼が見たことがないというインタ一ネットを見せ、海外の様々な工口画像をプリントアウトしてやったら、喜んで帰って行った。以来しばしば、新鮮なししゃもを手に訪れる彼だが、徐々に漫画の話題を口にしなくなり、今では黙々と部屋の隅のPCで工口動画のDLにいそしんでいる。昨夜、二人は初めてのキスをした。
