渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

集まれ!おたく族

井の頭公園に隣接する焼き鳥の名店「いせや」にてメンドリの姿焼きを注文、運ばれてきた老いた雌鶏の丸焼きを見るなり「かあさん」と絶叫、ピコピコハンマーを手に泣きわめきながら店員に殴りかかった渡辺電機(株)さんは、非常識な暴漢としてアルカトラズ監獄列島に収監されることになった。思惑通りだぜ…。この島で終身刑の身となっているロリコン漫画家たちに原稿依頼し、コミケで念願の行列を…。渡辺電機(株)さんの企みは上手く運び、東西の大物ロリコン作家たちの原稿が集まった。だが、80年代から外部との接触をいっさい禁じられた暮らしは、彼らのセンスを30数年前のままで留まらせていた。厳重な監視の目を逃れ、夜闇に乗じて暗い海へ平泳ぎで逃走する渡辺電機(株)さんの瞳は、希望に輝いていた。渡辺電機(株)さんが海の藻屑となったのか、それとも生き延びてコミケで生き恥をさらしたのか、今ではもう知る人もない。

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リングの天使

メキシコ修行時代はエル・ポコチーノと名乗ってマスクを被り、飛んだり跳ねたり時には大小便を撒き散らすド派手なルチャドールとして、現地のファンも多かった渡辺電機(株)さんだが、日本に帰ってからの漫画家生活は貧しく惨めなものだった。マスクを被っての持ち込みにも編集者は一様に冷たく、いくら見た目で奇をてらっても肝心の作品がワンピースの書き写しじゃ話にならねえよと、指を鳴らして屈強な黒人の警備員を呼んだ。結局、還暦を前に漫画をあきらめてメキシコに戻り、今ではリングに復帰している渡辺電機(株)さんだが、漫画家時代の話を聞かれると逆上し、シナリオを忘れて暴れ、何人ものレスラーを血祭りに上げており、評判は良くないという。

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芸能20世紀 話芸の達人

上岡龍太郎を怒らせて漫画界を追放された渡辺電機(株)さんだが、あれから20年を過ぎた今でも、当時の話になると途端に口が重くなるという。それほどにまで深い心の傷をどのようにして負わされたのか、本誌は説得に説得を重ね、ようやく話を聞くことに成功した。電機先生、今日はわざわざお越しいただきまして。キミ、自分から呼んでおいてその言い方はおかしいやろ。わざわざて思うんなら、なんで自分の方から行かんのや。説明しなさい。そう言ってメガネを光らすロマンスグレーの短髪の紳士は、どう見ても上岡龍太郎の安直なコピーだった。電機さん、それほどまでに。インタビュアーに変装した横綱は、いたましげに首を振る。だいたいこんな失礼な質問をしたところで、それがキミにとって何の利益になるんや。そもそもキミがこの仕事を選んだのは…。延々と続く説教を上の空で聞きながら、横綱は悲しい気持ちになった。立ち上がって非礼をわび、背中を向ける横綱に気付かないのか、なおも渡辺電機(株)さんは喋り続け、その口の端からは透明な唾液が泡立って滴り落ちる。電機さんの分も、春場所は頑張らなければ…。だが、足首の怪我のせいで、もう横綱には場所を満足に勤め上げるだけの力が残っていなかった。

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スーパーくいしん坊

ゴリラの脳を生きたまま食う!中国四千年の食の歴史において闇中の闇とされる幻の料理、はるばるシルクロードを運ばれて唐の国に送られたゴリラを、皇帝が活造りにして食べたと言われる、まさに超弩級のグルメに挑戦した渡辺電機(株)さん。無謀にも混雑する日曜午後の上野動物園のゴリラの檻にシェフの格好で侵入、オスのパタリロ(7歳)の背後からナイフで脳天を狙ったが、背後から怪力で抱きすくめ制止する者があった。メスの電波子(6歳)が、シェフ姿もりりしい渡辺電機(株)さんに恋をした。絞め殺されるか、ゴリラと結婚するか。まさに究極の選択ともいえる二者択一を前に渡辺電機(株)さんが下した決断。それは、偶々カバンに入れていた核ミサイルのスイッチを押すことであった。地球上が火の海に包まれ、放射能に侵されて生き物の住めない世界となったが、渡辺電機(株)さんの貞操は守られたのである。今、どうしているのか。

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モスラ対ゴジラ

「ハッピー興行社の熊山です」そう言って名刺を差し出した強欲そうな男は、よく見れば明らかに横綱の変装だった。モスラの卵を目玉にした一大観光レジャーランドの構想を語る横綱が気づくと、黙って話を聞いていた宝田明の身体がゆっくりと、前のめりに倒れ、首が胴体を離れてコロンと床の上に転がった。木偶だ。すり替わりやがった。へのへのもへじの描かれた木製の頭部を拾い上げ、横綱はニヤリと笑った。やっぱり、渡辺電機(株)さんだったんだな。その時。「タマゴヲカエシテクダサイ」甲高い声に振り向くと、人差し指ほどの小さな二人組、満賀道雄と才野茂の二人合わせて満才茂道が、テーブルの上で手を取り合って、横綱を見上げていた。「卵を、返して下さい」

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アイドル地獄変

かつてはアイドル声優として「アイドル天使ようこそようこ」「ドン・ドラキュラ」などに主演してアキバを熱狂させ、歌手として紅白にも出場した渡辺電機(株)さんも、今では酒焼けしたしわがれ声で口汚く悪態をつく酔いどれ中年男として、街の鼻つまみ者だった。今日もクダをまきながら、顔なじみの居酒屋で門前払いを食らい、のれんの外へ放り出された渡辺電機(株)さんを見下ろす、大きな影。おんどれ、ようもさんざんワシをコケにしてくれたのう。ヒーッ、あ、あんたはッ!! 渡辺電機(株)さんに「ようこそようこ」主役の座を奪われ、声優としての将来を潰され一生を棒に振った、かないみかだった。どこでどう暮らしてきたのか、野獣の如き面相で身の丈2mに及ぶ偉丈夫に襟首を掴んでつまみ上げられ、渡辺電機(株)さんは死を覚悟した。殺しはしねえ。ただし、借りは返してもらうがな。その年のM-1グランプリ決勝で拍手喝さいを浴びる2人の姿を、誰が予想し得ただろうか…。

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カニ食うな!

寝ている間に、ペットのカニクイザルに頭をかじられて脳の一部を欠損してしまい、渡辺電機(株)さんは正常な思考を失い、カニのような横歩きしか出来なくなってしまった。カニクイザルもの食うべからず!カーニカニカニカニ!!口から泡を吹きながら笑い、猛烈なスピードで横歩きで町の人々を追い回す様を見て、蓮の池を覗き込んでいたお釈迦様はたいそう心を痛めました。電機よ、これからは私のそばで暮らしなさい。いや、自分いまの自由な生活が肌にあってますんで。急に冷静な口調になった渡辺電機(株)さんは、頭にパックリ開いた傷口にスプーンを突っ込んでひとさじ、脳みそをお釈迦様に差し出した。美味いんスよこれが、カニミソにそっくりな味で。そりゃカニクイザルもかぶりつきますわ!ワッハッハ!もちろんそこにお釈迦様などいるわけもなく、病室でいつものように続けられる一人芝居を、もう同室の患者たちも、気に留めることも無くなっていた。

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