渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

Black Book

角膜に傷がついてしまったせいか、常に視界の隅にチンポが見えるようになってしまった安倍総理は、あれだけの激務と政局を、常にちんぽを見ながらこなしていたのである。今まで、大変だったね。そう労いの言葉をかけながら執務室に入って来た全裸の渡辺電機(株)さんを見て、総理はあっと声を上げた。常に視界の隅にある、あのちんぽだった。

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ルパン三世

どなた?「どろぼうです。」どろぼうさん?クラリスが言い終わらぬ内に、渡辺電機(株)さんは金属バットでクラリスをメッタ打ちにした。物言わぬ肉塊と成り果てたクラリスを尚も殴り続けながら、渡辺電機(株)さんは口の端からヨダレの糸を引きながら、ゲラゲラ笑い続けた。おい、ありゃあ駄目だぞ。物陰から見守っていたカリオストロ伯爵が、静かに首を横に振り、銃を向けて狙いを定め、射つ。小さな煙が上がり、声も出さず崩れ落ちる渡辺電機(株)さんの身体は、そのまま背後の窓から転落し、見えなくなった。死体は片付けられ、事件は内々に処理され表沙汰になることもなかった。伯爵はこれを機に城を処分して爵位も返上。以後はタレントとして活動したり、衆院選に打って出て落選するなどしていたが、徐々に精神に変調をきたし、還暦をすぎる頃には殆ど人前に出ることもなくなり、いつ頃亡くなったのかも、よくわかっていない。

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ほんまに死ぬやんけ

上高地のサナトリウムで療養中の渡辺電機(株)さんを見舞ったら、すっかり弱気になって、あの窓から見える木の葉が全部散るとき、あたしの命も散るときなの…と涙ながらに言うので、さっそくチェンソーを買ってきて根元から切り倒し、さあ死ね今死ねとドーキングドラムとチャルメラとチェンソーを鳴らして囃し立てると、病床にあった渡辺電機(株)さんは怒気をはらんでムクリと起き上がり、チェンソーを手刀で薙ぎ払って叩き壊し、おれの口からチャルメラをもぎ取り、放り投げた。宙を舞ったチャルメラがトーキングドラムの上に落下してペコンと間抜けな音が響き、あとに残った静寂の中で、渡辺電機(株)さんは静かにおれを見下ろし、ほんまに死ぬやんけと呟くと、そのままゆっくりとうつ伏せに倒れ、息絶えた。年齢は、140歳を超えていたという。

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渡辺電機(株)もし戦わば

スマッシュの際の「サー」の掛け声で一世を風靡した卓球界のスター渡辺電機(株)さんも、その晩年はラケットに触れることもなく、朝から晩までまんがに没頭する自堕落な日々を送っていた。渡辺電機(株)さんに国民栄誉賞をとの声もあった現役時代を知る者が、死人のように生気のない表情で原稿を執筆する姿を見れば、涙をこぼさずにはいられまい。そんな彼の元に、日本卓球連盟の使者が訪れたのは、2017年の大晦日のことだった。先生、この試合に卓球界の未来がかかっているのです。青ざめた顔の使者が、陰腹を切ってまでの覚悟をしていたことが、渡辺電機(株)さんの心を動かした。あなたの命、無駄にはしない。久しぶりにラケットを手にして向かった先の超満員のコロシアムでは、現役最後の試合に向けて究極の仕上がりを見せるフロイド・メイウェザーJrが、ただならぬ殺気を放ちシャドウボクシングを始めていた。思わず踵を返し逃げようとした渡辺電機(株)さんの両脇を、黒人スタッフたちが掴んで軽々と抱え上げ、リングへ連れて行く。名物リングアナウンサーのジミー・レノンにコールされて大歓声に包まれ、顔面蒼白で震える渡辺電機(株)さんがまさか、卓球のラケットでメイウェザーをメッタ打ちの血祭りに上げようとは、誰もが予想だにしていなかった。

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喧嘩の花道

「木更津の狂犬」と呼ばれた伝説の不良、渡辺電機(株)さんの逸話も、元を辿ってみるとすべて渡辺電機(株)さん本人のブログが発信源で、当時彼が関わりを持ったと称する実在の人々に確認をとっても「そのような人物は知らない」の一点張り。疑惑を検証するため、「アキバで渡辺電機(株)さんを囲むヤリマン女子大生オフ会」と称して本人を呼び出し、族車で取り囲んでエンジンの爆音と木刀で脅し、さらにその様子をニコ生で中継し、全国にウソを暴いてやろうとのプロジェクトが動き出した。当日、族車100台に分乗した特攻服の屈強な不良400人で、集合場所の秋葉原ココス前で待ち構えていると、空から神々しい鈴の音が…。一同空を見上げると、トナカイに引かれるソリに乗ったサンタ衣装の渡辺電機(株)さんが、おもちゃを満載した袋を担いで、優しげに微笑んでいる。童心に帰ってはしゃぎ、歓声を上げる不良たちに分け隔てなく優しい言葉をかけ、おもちゃを与える渡辺電機(株)さんの笑顔。今日も、世界は平和に満たされていた。

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或る発明家の死

パラシュート機能を持つ外套で空を飛んで見せると売り込んで、巨大イベントに発展して引っ込みがつかなくなり、エッフェル塔の上から跳んだ仕立屋ライヒェルトの死から105年。渡辺電機(株)さんが今また、アルコールランプで熱したきんたまの浮力でスカイツリーの展望デッキから飛んで見せると豪語して、引っ込みがつかなくなっていた。エッフェル塔のデッキは高さ60m、一方このスカイツリーの展望デッキは、350mなのだ。おそらく、地面に激突すれば原型を留めることなく命を落とすであろう。軽快なトークで番組を進行する有吉、審査員席から「はよ行け」オーラを発するテリー伊藤や前田日明、マツコ・デラックスら強面の芸能人の見守る中、アシスタントの山田隆夫によって、アルコールランプに火が灯された。もしその時ミサイルが飛んで来なかったら、渡辺電機(株)さんはこの世にいなかったに相違ないが、何百万もの都民の命と引き換えに救われる価値が、はたして彼にあったのか。焦土と化した東京の街を、たすかったたすかったと大喜びで、きんたまを丸出しで駆けて行く渡辺電機(株)さんの後ろ姿が、熱気でゆらめく巨大な夕陽の中に、消えて行った。

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悪の錬金術

学童社倒産の報を聞いて駆けつけた新漫画党メンバーたちの前で、四つん這いになった加藤編集長の背中にドカッと腰を下ろしてキセルをふかしながら、渡辺電機(株)さんは扇状に開いた札束でパタパタと顔をあおいだ。この会社も、雑誌も、このおっさんも、今日からわしが助けたる。「漫画少年」は無くならん!せやけど。そう言って、立ち尽くすメンバーひとりひとりの顔を順番にキセルで指差して、言い放つ。おまえら全員、いらん子や。どこなと好きなとこへ去ね。これは餞別代わりや。と、札束を投げ上げた。編集部に舞い散る紙幣を奪い合う若きマンガ家たちを尻目に、四つん這いの加藤編集長の尻に熱いキセルの先端を押し当て、悲鳴を上げる編集長に外へ這って行くよう命じた渡辺電機(株)さんは、新緑の芽吹く飯田橋の青空を仰ぎ、これからのビジネスに思いを馳せた。さあ、これからや。忙しゅうなるで。悪のコングロマリット、渡辺電機(株)の誕生の瞬間であった。

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