渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

フジロック初日感想

夜。雨の降る、無人富士スピードウェイ。松明を持った屈強のバイカー集団に追われ、号泣しながらメインストレートを全力疾走する、全裸の渡辺電機(株)さんの姿が、夜間照明に照らされて、生白く浮かび上がった。裸足の足音をぺたぺたと響かせながら最初のTGRコーナーをほぼスピードを落とさず曲がりきり、グンと加速しながら第2コーナーを突っ切って行く頃には、渡辺電機(株)さんの速度は250km/hに達していた。気がつくと、バイカー集団が必死に食らいついても渡辺電機(株)さんとの距離は開くばかりで、最終コーナーを曲がり切って再びメインストレートに姿を表わす頃には、渡辺電機(株)さんの身体は宙に浮き、接地したチンポのタイヤが高速で回転して火花を放ち、その速度は400km/hを超えていた。超音速でメインスタンド前のゴールを駆け抜けようとする渡辺電機(株)さんの正面に待ち構えた横綱白鵬が、鋭い立ち会いから思い切りかち上げると、激しい衝撃波とともに紫色の煙が円環状に広がり、渡辺電機(株)さんの肉体は蒸発した。

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Genesis 〜創世記〜

ユダの密告により捕らえられ、ゴルゴダの丘で磔の刑に処せられた渡辺電機(株)さんだが、手首を貫通して十字架に深く食い込んだクギを見据えると、憤怒の気合を放った。左右の手首、さらに両足首に貫通していたクギが、分子レベルで破壊されて消滅した。痛くもかゆくもねぇな。首と肩をゆっくりと回し、長々と放ったげっぷの低音が地すべりを引き起こし、吐息に混じった濃縮メタンガスが、周囲数キロ範囲内の生き物を瞬時に白骨に変えて行く。この年から始まるはずだった西暦は幻に終わり、人類が再び地上に姿を表すのに、あと数千年の時を待たねばならなかった。その際、渡辺電機(株)さんは文明復興の波に乗り、解体工事と資材運搬の会社を立ち上げ、大いにもうけたという。

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海のトリトン

殺してスグならバイキンも繁殖してないから大丈夫!そのことに気付いた渡辺電機(株)さんに、迷いは無かった。酢飯をパンパンに詰めたタッパーを手に、シュノーケルを着けてザブンと飛び込んだ海の中。魚群に向かってトウッと気合も鋭く放った手刀は、一匹のイワシの身体を貫通し、仕留めた。まだピクピクと跳ねるイキの良いイワシを、その場ですし飯に乗せて食う。究極の新鮮さ。全ては完璧なはずであったが、海中で開けたタッパーから、ワラワラと水中に散って行く米粒を呆然と見つめる渡辺電機(株)さんの片手に刺さったままのイワシは、いつしか小魚が群がって骨まで食われていた。ちょっと、コンセプトに無理があったか…。頭をかきかき陸に上がり、憂さ晴らしにパッと散財したれと回転寿司に入った渡辺電機(株)さんは、腐ったイワシにあたって三日三晩悶絶したのち、自宅で人知れず絶命したという。

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おれは浪速のツイッタラー

以前バイト先の先輩に聞いたんだけど、サイエントロジーの創始者を名乗ってセミナーを開いたり、空飛ぶ円盤の動力を解明したと称してクラウドファンディングで製造資金を募る等、怪しげな活動で巨額の収入を得ていた渡辺電機(株)さんだったが、晩年は生活に窮し、旧知の横綱の紹介で力士の職を得て、幕内力士として泥だらけで汗を流す日々を送ったという。ほんまそれ。

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暗い所へ

ようお相撲さん、お茶飲まない。両国国技館から取り組みを終えて出て来る力士に片っ端から声をかけ、ナンパに励んでいた渡辺電機(株)さん。白いオープンカーのクラクションを派手に鳴らし、足早に立ち去る力士に並走して追いかける。ヨウヨウ関取、乗らない?こんな手当たり次第のナンパも、負けてムシャクシャした力士が捨て鉢になって引っかかってくることもあるのだと、いう。車に乗せてしまえば、こっちのもの。映画を見てからパブ、スナック。お酒を飲ませて酔わせちゃおう♫ などと力士を食い物にしていた渡辺電機(株)さんにもある日、正義の鉄槌が下る日がやって来た。甘い言葉に誘われて助手席に乗り込んできた力士が、こちらを見た。その無表情の顔は力士ではなく、偉大な小説家・松本清張その人であった。それから二度と逃げることもできず、松本清張の書生として生涯を終えた渡辺電機(株)さんに関する記述は、松本の遺した膨大な著作の中にも、ほとんど残っていないという。

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骨餓身峠死人葛

おいどけクソババア!!心臓をえぐるような罵声を正面から浴びせられ、思わず固まってしまった渡辺電機(株)さんだったが、声の主が旧知の横綱だと知り、笑みがこぼれた。冗談キツいよ横綱、だれがババアだっつの。どけっつってんのがわかんねえか。くせえんだよババア!横綱は口を歪めた邪悪な表情を崩さず、立ちすくむ渡辺電機(株)さんを人差し指で軽く払いのけ、身分わきまえろと吐き捨てると、雪駄の音も荒々しく、唾を吐きながら去っていった。最多勝利数の記録を塗り替えただけで、あそこまで態度が変わるとは…。肩をすくめ、両手を広げておどけた表情で、稽古場の鏡を覗き込むと、鏡の中では、おどけた表情で肩をすくめるシワクチャの老婆が、こちらを見ていた。

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前立腺異常なし

かつて、ボクシングWBC世界ウェルター級チャンピオン、ミゲール・コットとのタイトルマッチ12Rを、肛門に異物を入れたまま戦い抜き、あわや王座奪取かと思わせる健闘を見せた渡辺電機(株)さんが、次に挑戦したのは、肛門に異物をいれたままの大相撲15日間フル出場であった。14日目まで7勝7敗、千秋楽の三役揃い踏みではさすがに疲れた表情を見せながらも、結び前の一番で大関高安を土俵際で叩き込みに破る星を挙げ、みごと技能賞を獲得した。肛門に異物をいれたままのインタビューで渡辺電機(株)さんは身悶えしながら、次はプロ野球140試合に挑戦です!と力強い口調で宣言し、同時にポンと何か栓が外れるような音が聞こえたかと思うと、インタビュールームは一瞬で大便の濁流で満たされ、画面には何も見えなくなった。

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