渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

アイドルマスター真剣勝負

海浜幕張駅の朝。始発列車から続々と吐き出され全力疾走で改札に殺到するオタクたちを蹴散らして、唸りを上げて突進する巨体は、見間違えようもない、横綱白鵬その人であった。どかんかい!天下の横綱がデレマス物販に初参戦じゃーい!背中に乗って威勢の良い掛け声を上げ、「横綱参上」の幟を振り回す渡辺電機(株)さん。横綱は自動改札機にSuicaを力任せに叩きつけ、粉々に粉砕された残骸を飛び越え、一直線に海の方へ駆けて行く。オタクが雲霞の如く群がるメッセ前を何故か素通り、海浜公園に向け爆走する。ちょ、横綱!そっちじゃないっす!背中で慌てる渡辺電機(株)さんを意に介さず、横綱はなおも地響きを立てて一直線に東京湾を目指して走った。轟音と巨大な水柱を上げて海中に没した横綱は、やがてぽこんと浮かび上がると、海面の向こうにかすかに見える対岸の羽田空港を目指し、抜手を切ってゆっくりと泳ぎだした。横綱の背中にしがみついて悲鳴を上げ泣き叫んでいた渡辺電機(株)さんは、横綱の動きに合わせて水中に没したり浮かんだりを繰り返していたが、やがて姿が見えなくなった。

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脱糞ジャスティス

ズバッと参上、ズバッと脱糞!!悪漢たちが今まさに正義の博士を爆殺しようとしていた採石場に、突如マントをひるがえして現れ、見得を切ってモリモリとその場に脱糞し、風のように去っていった渡辺電機(株)さんを、悪漢たちは呆然と見送った。え、これ続けていいんすよね。互いに顔を見合わせ、困惑する博士にすいませんと何故か謝り、悪漢たちは慌てて作業に戻った。渡辺電機(株)さんが残した黄褐色の巨大な大便は、特に悪臭を放つわけでもなく静かに赤土の上に鎮座していたが、どうしても気になる悪漢たちと博士はやがて徐々に大便の周りに集まり、遠巻きに押し合いへし合い、おい押すなよ!などと嬌声を上げ、大便を棒でつついたり、靴の先で蹴って互いに追いかけ回すなど、童心に帰っていつまでもはしゃいでいた。その頃、渡辺電機(株)さんは職務質問の警官に叱責され、交番でべそをかいていたが、悪漢たちのあずかり知らぬことであった…。

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地上最強コロシアム

北海道は長万部町にオープンした水族館、おしゃまんべマリンパレスのウリのひとつであるゴマフアザラシの格闘ショーは、開館初日から多くの老若男女が詰めかけた。1階から4階までブチ抜いた円形水槽の中を上下に行ったり来たり、のんびり泳ぐ大小のアザラシ5頭と戦うのは、時給780円で雇われた初老フリーターの渡辺電機(株)さん。好きなエモノを選びなと飼育員がアゴで指し示したテーブルの上には、バナナ、ピコピコハンマー、TENGA、どらやき、コンニャク、見知らぬギャルのプリクラ等が、並んでいた。真剣な表情で迷いに迷った渡辺電機(株)さんは、急かされてあわててプリクラとどらやきを両手に持つと同時に、飼育員に尻を蹴られて水槽の中に落ちた。遊んでもらおうと一斉に群がる5頭のアザラシ。泣きながら水中で必死に振り回したどらやきが、ふやけてモロモロと分解し、つぶあんが水中に散って行く。興奮した観客の殺せ、食えの歓声の中、プリクラだけは死守しようと必死にもがく渡辺電機(株)さんの身体を、アザラシたちが嬉しそうにつつきまわし、口にくわえて水中を上へ下へと引っ張り回す。手塚治虫のデビューから約70年、このような形でキャリアと人生を終える漫画家は、後にも先にも彼だけだったという。

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プロレス偉人伝

遠路はるばるブラジルからスカウトした猪木少年の素質を認めつつも、なぜ力道山は執拗な虐待を続けたのか。その真意を明かさないまま死んでしまった力道山を、恐山のイタコを使って呼び出し、内幕本を書いてひともうけしようと企んだ渡辺電機(株)さんだったが、齢九十を超えるはずの小柄なイタコはスックと仁王立ちするや、火の出るような空手チョップの連打を浴びせた。鼻血を噴きながらころころと転がった渡辺電機(株)さんの身体は、そのまま宇曽利山湖の水面にポチャンと落下し、二度と浮かんで来なかった。力道山が憑いたままのイタコは野太い声で、こらぁ誰かおらんかッと怒鳴りながら、大股でどこかへ歩き去った。常識を超えた復活劇でプロレス界に激震が走る、ほんの数日前のことである。

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オーレ!

ピッチを転々ところがるボールに殺到する選手たちの先頭で、颯爽と駆ける三浦カズ選手の年齢を感じさせない軽快な動きに、人々は酔った。その時である。キングカズに対抗して、デンキカブ!!裏声で絶叫してピッチに飛び出した全裸の中年男は、ボールに殺到する選手たちにアッという間に飲み込まれ、姿が見えなくなった。一瞬ためらった審判も笛を吹くことはなくゲームは続行され、試合終了後に調べても、芝生の上に僅かな血痕と陰毛が残るだけで、事件の証拠となる物は何一つ残されていなかった。同日同時刻に姿を消した、無名の中年漫画家に気を留める者も、いなかった。

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アイドル群雄伝

天下のハロプロキッズ出身を舐めんなよ!威勢の良い啖呵を切ってまくり上げて見せた渡辺電機(株)さんの二の腕は細くしなびて、たるんだ白い皮膚に浮かぶ青い血管と大きなBCG痕が目立っていた。わかったかこら。わかったら、さっさとおれもAKBに入れんかい!秋葉原のAKB劇場の関係者入り口で、その場しのぎのウソをついてゴネる渡辺電機(株)さんの姿は、いまや街の風物詩とも言える日常の風景だったが、垢だらけの狂った中年男性をいつまでも放っておくわけにもいかず、温厚で知られる秋元氏も、重い決断を下さざるを得なかった。悲しげに操作するスマートフォンの液晶に、横綱の四股名と電話番号が、表示された。

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渡辺ヨットスクールの青春

わたしが直す!そう叫んで、ヨットから相模湾の海にダイブした渡辺電機(株)さんは、二度と浮かんで来なかった。全国から集められた不良や不登校児童、ロリコンらの見守る中での惨劇であった。なんなんだよ、あのオッサンは。ボヤきながら三々五々、家に帰って行った生徒たちはその夜全員、同じ夢を見た。白馬に乗って哄笑する渡辺電機(株)さんにヨットハーバーを追い回され、レストハウスで肛穴を犯され妊娠する夢だった。

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