渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

エディション・オブ・ゴリラ

「なんなんすか、警察呼びますよ」檻の上によじ登り、鉄格子の隙間からツバを垂らす嫌がらせをくり返す渡辺電機(株)さんに、中のゴリラはハッキリと日本語で、そう言った。渡辺電機(株)さんが聞く耳を持たない風で、とうとう下半身を丸出しにして、ジョロジョロと檻の中に放尿し始めると、ゴリラはもはや動物らしさのかけらもない慌てようで、悲鳴を上げた。ちょ!まじやめろっつの!おい誰か警察呼んでくれよおい!面白半分に手術でゴリラと脳みそを交換した渡辺電機(株)さんの必死の叫びを、親子連れやカップルが遠巻きに見守りながら、楽しげに写真を撮り、指差して笑っている。人間の姿に戻れる日は、やってくるのだろうか…。

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横綱サウンドマシーン

ゲッゲッ、ゲゲゲのゲッ!のんきに懐アニソンを歌っているのは誰だよと思ってよく聞いたら、バカがゲロ吐いてやがる!ふざけんなよ神聖な稽古場で!!横綱白鵬は飛び起きて稽古場へ向かいかけ、全裸なのを思い出して慌ててジーンズを履き、ボブ・マーレイTシャツの上からラスタマンボレロを羽織り、ラスタ帽をかぶり、首に数珠をかけ、手にしたギターでレゲエのリズムを刻みながら、稽古場に駆けつけた。セッションは、既に始まっていた。汗だくでコンガを叩いていた鶴竜が、待ってましたよとアイコンタクトを送る。空間を切り裂く、稀勢の里の魂のシャウト。コンソールの前に座って黙想していた日馬富士がカッと目を開き、忙しく卓上のツマミをいじり始める。大相撲夏場所。両国の熱い大地、突き抜ける青空。15日間に渡る相撲ダブの祭典は、始まったばかりだ…。

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保護責任者遺棄致死罪

朝10時の開店から駿河台下交差点のゲーセンの奥の台に張り付き、7時間かけてようやくゼビウス1千万点を達成しようとしていた、まさにその時。渡辺電機(株)さんのスマートフォンに着信音が鳴り、液晶画面にSMSの文面が浮かび上がった。「電機さん今日来んの?アミノ酸あるよ。夏のせいか、アゲアゲなんだよね」また横綱からだ。MDMAはやめておけと、あれほど言ったのに…。構わずプレイを続けると、さらに着信は続く。「来たら、すぐいる?」あの野郎、おれをクスリで潰して殺す気か…。あと数千点のところまで来ていたが、構ってはいられない。諦めて立ち上がり、7時間ぶりにブラウン管から目を離して、軽いめまいを覚えながらバッグを掴んだ。よろめきながら店を出ようとしたその時。みし、みし、みし。と、重い何者かが、狭い階段を静かに登ってくる足音が響き渡り、おれは絶体絶命を悟った。おれがポスターだらけの窓ガラスをブチ破って歩道に転がり落ちるのと、横綱がテッポウで店の壁を粉々にブチ抜くのと、ほぼ同時であった。ガラスの破片にまみれ血ダルマで、神保町の街を靖国方面へひた走るおれの背後から、すり足の横綱がモノスゴい速度で、どこまでも追いかけて来た。

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横綱天使☆ぷりん

横綱、稽古お疲れさんでした。今日のちゃんこは、鶏団子ナベとグリンピースごはんっす!付き人から受け取ったどんぶりに山盛りの豆ご飯を見て、白鵬はあんぐりと口を開けていたかと思うと、やがてぼろぼろと大粒の涙を流し、号泣し始めた。グリンピースきらいや言うたのに。うちいやや。いややー。モンゴル出身のはずの横綱が、なぜ泣くと関西弁になってしまうのか、その謎を探ろうとした渡辺電機(株)さんは、大阪府泉南市の路上で目撃されたのを最後に、行方を絶っている。既に、大阪湾に沈んでいるのかもしれない。トップ屋稼業には、常に危険が付きものなのである。困り果てた付き人らを尻目に、横綱はいつまでも、しゃくり上げて泣き続けた。いつもこの手で、プリンをせしめるのだ…。

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おい地獄さ行ぐんだで!

喰らえッ必殺!カニ光線!しびびびびびび。渡辺電機(株)さんが左右のハサミを頭上で交差させると触覚が光り、下品なピンク色の光線がほとばしり、鬼浅の身体を貫いた。ギャーッ!!なまぐさい炎に包まれた鬼浅は、悶え苦しみながら海へ落下していった。おれたちは勝ったんだ!プロレタリアットの勝利だ!口から歓びの泡を吹いて勝利の余韻にひたる渡辺電機(株)さんを、労働者たちはよってたかって手足をむしり取り、塩ゆでにして食ってしまった。ミソまで食われてはたまらないと、甲板を転がって海に逃げ込んだ渡辺電機(株)さんは、巨大なダイオウイカに姿を変えて船を襲い、労働者たちもろともオホーツクの冷たい海に沈めた。勝者のいない、哀しい闘いが幕を閉じたのである…。

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海からの呼び声

うふふふ。妖艶な笑みを浮かべ、しなを作ってワンピースを脱いだ渡辺電機(株)さんは、ほとんど裸同然のビキニ姿で、アバラの浮いたやせこけた躰を見せつけた。高知県須崎市の安和駅前に広がる美しい砂浜で、みすぼらしい裸の中年男が、浜風にあおられヨロヨロと立っている。げほげほげほ。ガーッぷ。はげしく咳き込み、汚らしいタンを砂浜に吐き捨てると、渡辺電機(株)さんはよたよたと波打ち際へ駆けて行った。ああ、せっかくの須崎の美しい浜辺が、渡辺電機(株)さんの薄汚い裸で汚されてしまう。目を覆いたくなる思いで、駆けて行く背中を眺めていると、砂の凹凸に足を取られ、ふらふらと前につんのめった渡辺電機(株)さんを、波打ち際から突然顔を覗かせた巨大なシャチが、頭からぱくりと丸呑みして、そのまま海中に没した。悲鳴も聞こえず血しぶきも飛ばず、何の痕跡も残さずにシャチの餌食となって海に消えた渡辺電機(株)さん。いったい、何のための半世紀の人生だったのか…。

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ドクター・フィールグッド

モトリー・クルーに校舎の屋上に呼び出された渡辺電機(株)さんは、カツアゲ、最悪リンチ殺人を覚悟して、遺書を懐に震えながら放課後の屋上にやって来た。おどおどと進み出る渡辺電機(株)さんを取り囲む屈強な4人の大男。ななな、なんすか。四つん這いになれや。ヴィンス・ニールが、バケツのポップコーンを口に放り込みながら、顎で指図する。トミー・リーがミリンダグレープの空き瓶を背後に投げ捨て、ニヤニヤしながらジーンズのジッパーを下ろす。ああ、おれモトリー・クルーに輪姦されるんや…。腰が抜けて逃げることも出来ず、呆然と見上げたトミー・リーがジッパーから取り出した、巨大なイチモツ。その太い幹に、極太マッキーで描かれた"Happy Birthday, Denki."の文字。 笑顔の4人に助け起こされ、祝福のシャンパンシャワーとクラッカーの紙吹雪を浴びる渡辺電機(株)さんに、プレゼントのサイン入りプラチナ・ディスクが手渡される。友情って、ええもんやな…。だが渡辺電機(株)さんはこのディスクを利用して、4人に無断でモトリー・クルー記念美術館を建てて大もうけし、この美しい友情もあっけなく消えた。

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