渡辺電機(株)

マンガ家・渡辺電機(株)さんの公式ブログです

いたち野郎

この数年に鬼籍に入った偉大な名横綱たち。大鵬、北の湖、千代の富士、隆の里。その遺髪を数本ずつ、さる筋を通じて極秘入手した渡辺電機(株)さんは、実家の庭に勝手に設置した渡辺電機(株)バイオテクノロジー研究所と称する掘っ立て小屋で、DNA合成による史上最強の力士を生み出そうと実験を開始した。ぐつぐつ煮立った熱湯の中に、イモリ、ドクダミ、犬の牙、ラピスラズリ、龍の珠、イカリソウ、土俵の砂、そして四人の遺髪を投入し、ドロドロになるまでかき混ぜる。そしていよいよ、人間の精液を…うやうやしい手つきでチンポを取り出した渡辺電機(株)さんの背後で、2匹のイタチがせわしない動きで交尾に励んでいる。絶頂の快感にのけぞった牡イタチの目の前に、渡辺電機(株)さんが取り出した陰茎の先端があった。思い切りかぶりつくイタチ、絶叫してのけぞる渡辺電機(株)さん。陰茎にぶら下がったまま、遠心力で勢い良く前方に振り回される、2匹のイタチ。つながった生殖器がスポンとはずれ、牝が煮えたぎる液体の中に没すると同時に、牡イタチから放たれた精液が、キラキラと光りながら、液体の中へ舞い落ちる。翌日、イタチの顔をした巨大な力士が街を破壊し、自衛隊の攻撃を振り切って御殿場山中に逃げ込んだ。チンポを失っただけで助かった渡辺電機(株)さんは、二度と力士の合成を試みることはなく、しずかな余生を送ったという。

続きを読む

ラストエンペラー

吐き気がするほどロマンチックだぜ!これが本当のおれだッ!!ついに念願の生前退位を実現させたおれは、それまでの偽りの笑顔の仮面をかなぐり捨て、ありのままの自分で国民の前に出る決意をした。昨夜MICHIKOに打ち明けると、いつものように優しく微笑み、あなたのしたいようになさって。と、おれの拳に手を添えてくれた。サンキュー!お前もいいオンナだぜ!膝に穴の空いた黒のロンドンスリムにゴツめのワークブーツ、素肌に革ジャン。耳には安全ピン、ゾンビと見まごうドス黒いシャドウを入れ、髪はデップ…と言いたかったが買いに行く時間が無かったので、厨房からくすねたラーメン用の背脂をコッテリ塗りつけ、ビンビンに尖らせる。陛下、お時間です。通路側でうやうやしく待つ侍従長ごとドアを蹴り飛ばし、大音量で流れ始めたダムドのNew Roseに乗って、ぴょんぴょん飛び跳ねながら国民の前に飛び出したおれは、背脂の匂いにつられてワッと集まってきたトンビやカラスに頭を突つかれ、流血して泣き叫びながら逃げ回った。血に染まった視界の隅に、般若の面を着けトゲトゲの黒いジャンプスーツに巨大ロンドンブーツを履いたMICHIKOが、熱狂する大観衆めがけて高さ数十メートルの舞台からダイブする姿が、かすかに見えた。

続きを読む

智恵子抄

智恵子は東京には空がないと言うが、空だけじゃねえんだよ。たこ焼き器も、東京の家庭にはないんだぜ。まじすか。大きな声を出して振り向いた智恵子は、心のきれいなキチガイのふりをするのも忘れて、苛立たしげに肩をすくめた。じゃあ、東京の人は日曜に何するんすか。こいつだ。光太郎がゴトリと目の前に置いた拳銃に、智恵子の表情が固まる。東京の家庭じゃな、日曜にはロシアンルーレットで一家団欒を楽しむんだよ。光太郎はくわえタバコのまま拳銃を手に取ると、人差し指で弾倉を回した。まずはおれからだ、よく見とけ智恵子。笑顔で自らのこめかみに銃口を当て、智恵子がなにか言う暇もなく、躊躇なく引き金を引く。カチリと弾倉の回る音。簡単だろ、智恵子。やってみろ。手渡された拳銃の冷たい重みが、智恵子にポエムへの逃避を許さない。病室の壁時計が時を刻む音が、やけに大きく響いた。

続きを読む

バンドやめようぜ

ディスクユニオンの掲示板に貼ったメン募「当方ボーカル、全パート募集。完全プロ志向。」のビラをみて電話してきたのが全員ビートルズのメンバーとはビックリだが、才能が保証されたメンバーが集って、これほど心強いことはない。最初のミーティングでは他の四人がおれそっちのけで英語で盛り上がり、スタジオ入りする頃には、こちらを指差してクスクス笑いながら耳打ちするようになっていた。最初のセッションから一発で完璧に息の合った演奏に、おれの入る余地はなく、ミーティングのメシ代とスタジオ代を払わされた挙句、犬のようにスタジオから締め出された。おれの考えたバンド名「うしろからチンポ刺され組」まで勝手に使われ、あれよあれよとビッグネームにのし上がっていくのを、おれは一介の音楽ファンとして、ただ眺めているしか無かった。メシ代とスタジオ代は、彼らが解散するまで払わされ続けた。

続きを読む

人生とは何だ

渡辺電機(株)のオールナイトニッポン!えーそんなワケで今日も有楽町はニッポン放送から生放送でお送りしておりますが。えー、今ですね。このスタジオ、おれ以外誰もいないんですが。作家さん、どこ行ったんすかね。ガラスの向こうにも誰もいなくて、えーとこれ本当に放送されてんの?まあいいや。えー、メールFAX、お待ちしております。まだ聴いてる人がいればですが。えーと生きてる人、いらっしゃったらぜひご連絡下さい。あ、作家さん帰ってきました。あー、なんか血を吐いて紫色の顔してますが、死んでます。死んだまま動いてますね。通路の方からなんかうめき声がたくさん。あ、作家さんこっちに来ます。腐ってます。くさいくさい。アッ後ろからも続々と、

 

続きを読む

へこたれへん。

森友学園立ち入り疑惑の件でだんまりを決め込み批判を浴びる辻元議員の居場所をついに突き止め、潜伏先のマンション前で張り込んだおれの前に現れたのは、剃り上げた頭に手術跡も痛々しい辻元議員であった。その姿に当惑しつつもオートロックの手前で行く手をさえぎり、疑惑についての質問を浴びせる。議員はたじろぐどころかカン高い声で笑い、まだ傷跡の生々しい自らの額を手のひらでパァーン!と叩き、ガキの使いやあらへんでェー!!と、絶叫した。いくつかの質問にもことごとく同様の反応を見せ、なおも大笑いしながら、マンションの中へ消えて行く議員を、我々はただ見送るしかなかった。

続きを読む

番長学園

森友学園にやってきた転校生は、クラス一同に紹介しようとする担任をさえぎり、黒板に勢い良く自分の名前を大書すると、ふりむきざま叫んだ。おれは!転校生の渡辺電機(株)だっ!!この学園で一番強えヤツと勝負したい!さあ、どいつが番長だ?…と言いたいところだが、どいつもこいつもウラナリのヒョウタンみてえなヒョロヒョロばっかりだなあ。さーてオレの席はっと…あそこあそこ!あの一番後ろのカワイコちゃんの隣に決めたぜ!そう言って机の間を歩き出した渡辺電機(株)さんの足が何者かに引っかけられ、派手に転倒した。だだ、誰でい!ワッ、安倍総理!?と思ってよく見たら、クラス全員、国会のみなさん!カワイコちゃんは…アーッ、辻元さん??国会議員に囲まれて、おれの学園生活いったいどうなっちゃうの〜〜〜?!

続きを読む